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短い会話や日常について
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「もしもし。」

――今どこ?
――家。あんた誰?
――そうだろうと思った。ニュース聞いたんだろ? まあお前が何かするとは思ってなかったけどさ。
おれ今ズーにいるんだけど。すげえよ。同じバンドがもう三日くらいぶっ続けで演ってるんだけどね、音なんかもうめちゃくちゃっていうかボーカルがマイクに向かって血ィ吐いてるだけなんだけど。ギターは弦切れてるしドラム倒れてるし。ベースなんか立ってるけど指削れてるしね!
でもさあ、すごいのは聞こえてるってことなんだよ。ここにいる連中全員にバンドの音が聞こえてんの。曲が終われば拍手して、次が始まれば歓声を上げるんだよ。照明がさっき急性のアル中かなんかで死んだせいでぐるぐる回りっぱなしの白いライトの下でみんな踊ってんだ。こうなったらもう実際に音が鳴ってるかなんてもう問題じゃないだろ?  笑えるよな。――

――あんた、

「椿?」

そのときぼくらは同じように白いひかりを見ていたと思う。
聞こえないバンドのフィナーレを無声の爆音が掻き消して、観衆は砕け散り、
ぼくらは歓喜を放ち世界の終わりを見た。
ぼくは椿と話した。
椿もぼくもいなくなった。

果ては世界と一致したんだ。
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足元には泥寧の手招き、
それでもなぜか足取りはとても軽い。

雨に濡れた葉のような柔らかい空気を掻き分けてその人を連れていく

ああ、ただの喧騒では終らない事態が起きていて、
逃げることを決めた。

「こっちだ」

眩しい光
闇の中の凶悪なトラップが
こちらを見据えているけれど、

私があなたを信じるように
私を信じてくれれば

今夜

悪い夢から逃げられるよ
僕には最早欲しいものもいらないものもなくて、好きなものや嫌いなものすらない。ただ目の前にあって届かないあの人と空への興味と深い憧憬があるだけだ。毎日そのことばかり考えていて、たまに考えるのはやめてただ待ち尽してみたりして、それでもやっぱり何も変わらなかった。体にはいっぱい傷ができたけどそんなのはどうでもいい。ちょっと痛いだけ。

ねえ、僕にはわからないみたいだ。あんたが空になったのか行ったのか、空があんたなのか、僕はただ混乱するだけで馬鹿みたいな生活を送ってる。
でもひとつ気付いたのは、今僕はとんでもなく悲しいということ。何もかもやるせなくて、そこに何かあるのかないのか、何かを僕は求めているのかいないのか、いや多分求めてないんだろうな、とにかく空へ落ちていきたいという毅然とした思いだけがどんどん強くなるだけだ。

行ってもいい?
ここ数日はそればかり考えてた。そして考えれば考えるほどそれは優しくなって僕の手を引いてる。ここまで来てしまうくらいにね。

あ、もしできることなら迎えに来てほしいなあ。今思い付いた僕の欲しいもの。

今日もいい天気でよかった。
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