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短い会話や日常について
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生ぬるい空気がゆっくりと地面から這い上がり
代わりに黄味を帯びた光がゆっくりと吸い込まれる。

そうして暮れたばかりの空にぽっかりと開いた月が赤かった。

「めっちゃきれい」
「すごいね」

先に気付いた俺は天を仰ぐ。
いつもは唯の蒼白な穴にしか見えないのに、今日は薄明るく濁った雲を従えていて、
それがまるで月からどろどろと流れ出しているように見えた。

これ程までに赤いと、

「なんか血痕みたいだね。」

返事はなかった。
隣りの彼は立ち止まり、随分と赤い月を気に入ったのか、或いは逆か。
色素の薄い目は少し怖いくらいに赤に魅入っている。

(……しょーがないな。)

手に持ったコンビニ袋。
それさえも落としそうで。

多分自分には、最早空に依存に近いほどの執着を見せる彼を歩かせることなどできないから。
かけたかった言葉はため息と一緒に飲み込んで、とりあえず彼がどこかへ飛んで行ったりしてしまわないことを願っておいた。
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「猫。」
彼女が言った。僕はあッ、と思った。道の真ん中に、猫の死骸があった。蒸し暑い空気に腐敗して蛆が沸き、異臭と蝿を纏った塊の前で彼女は立ち止まってそれを見た。
「三毛猫ね。可愛かったんだろうな。」
白いサンダルから見える赤のペティギュアは剥げて短い爪の先は砂まみれだった。長い距離を歩いてきた。陽炎が視界を漂う中で、彼女は僕の名前を呼んだ。長い髪が風に揺れてはッとさせられるようなまろやかな空気の流れがそこに生まれて、僕は詰まる息を殺して何か言おうとした。足が震えた。
「やめにしよ。もううちはどこも行きたくない。」
彼女は「やめにしよ。」ともう一度言った。
「今日は暑いね。」
僕達は道の真ん中で立ち尽くした。蝉の声が反芻する濃密な空気の中で肩で呼吸をしていた。気づいていなかったわけではない、スカートの裾がほつれているのも泥が撥ねているのも肌の色が変わってしまったのも、気づいていた、無視しきれなかったのだ。彼女だけがそれを見据えていた。
正面を向いたらそこは道の途中だった。僕らは道を歩いていた。そこは道の途中だった。途中のはずだった。逃げてきた。途中から逃げていた、でもここはもう途中ではなかった。
目の前に転がっているのは三毛猫ではない。 ここで終わりだった。

途中は僕らの終わりだった。
5月29日0:34にコメントくれた方。
ありがとうございます!雰囲気というかニュアンスだけで作っている部分も多いサイトなのでそう言っていただけるのはすごく嬉しいです。

拍手だけの方もほんとうにありがとうございます。

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リエンドについて考えていたら、とんでもない矛盾を発見してしまいました。矛盾というか真逆な感じすらしています。どうしよう。
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